多汗症と漢方薬

多汗症の原因

多汗症とは、通常の体温調節の範囲を超えて必要以上に汗をかく事で、日常生活に支障が出たり精神的な負担・ストレスになる状態の事です。

 

緊張すると手の平に汗をかく人は意外と多いと思いますが、発汗が頻繁に起こったり多量になると毎日の生活に大きな支障が出てしまいます。

 

多汗症の原因は今のところはっきりとは分かっていません。従来は、精神的な負荷による交感神経の過度の緊張が大きな要因の一つと考えられてきました。

 

しかし人によってはリラックスしている時にも、突然多量の汗をかくというケースがあります。
そのため交感神経の緊張と緩和のバランスの崩れに原因があると考えた方が分かりやすいかもしれません。

 

また東洋医学では必ずしも交感神経だけが原因ではなく、体質的に身体に余分な水が多かったり、皮膚の引き締める力が弱く体表の水分が漏れやすいという体質面も原因のひとつとして考えます。

多汗症の種類

多汗症には、全身性多汗症と局所性多汗症があります。

 

全身性多汗症は、その名ととおり全身に多量の汗をかきます。
それに対して局所性多汗症は、決まった部位に多量の汗をかき、汗が出る部位によってそれぞれ名称があります。

手のひら 手掌多汗症
足の裏 足底多汗症
わきの下 腋窩多汗症
顔面 顔面多汗症
頭部 頭部多汗症
全身 全身多汗症

 

多汗症に対する漢方治療

漢方改善症例

〇10代・女性
周りと比べて、運動時などに大量の汗をかいてしまいます。

以前から体質的に浮腫みやすく、排尿の回数が少なめです。水分代謝に問題があると考え、水の巡りを良くする漢方薬をお出ししました。

 

漢方薬を飲み始めると、トイレの回数が増えて、体重が3キロ落ちました。
水の循環が改善されて、体内の余分な水が排出されたものと思われます。

 

その後も服用を続けると、以前に比べて浮腫みにくくなり、汗もそこまで気にならなくなりました。

 

〇10代・男性

小学生になった頃から手や足の裏の発汗が気になってきたようです。
緊張する時も、それ以外のリラックスしている時でも常にベタベタとしてしまいます。

 

血熱・血虚に対する漢方薬を飲み始めると少しずつ汗が気になる事が無くなりました。
服用を続けるうちに普段の生活で手のひらや足の裏がべたつく事は無くなりました。

強く緊張する時は少し手のひらの汗が気になりますが、それも以前に比べるとだいぶ軽くなったようです。

 

〇40代・男性

1年程前から会議などの緊張する状況で、首から上に大量の汗が噴き出すようになりました。

元々汗かきの傾向はありますが、仕事以外では汗で困る事は無いようです。
心療内科で処方された漢方薬を1年近く服用していますが、少し良いかな?程度でそこまで変化はみられていません。

 

自律神経のバランスを整える事を目的とした漢方薬で、不安感や気持ちの落ち着かなさに対しては軽減がみられましたが、発汗には変化はありませんでした。

 

再度漢方薬を検討して、頚椎の正常化を目的とした漢方薬を追加でお出しすると、会議中の発汗に大幅な軽減がみられました。

 

この方の場合は、頚椎の異常が発汗に関する自律神経に対して悪影響を及ぼしていた可能性があります。

 

〇30代・女性

10年以上前から続く脇汗のご相談。暑い時期はもちろん、寒い季節でも関係なく常に気になるようです。
中焦の清熱を意識した漢方薬を飲み始めると、涼しい日なら気にならなくなり、汗を隠すために上着を羽織る必要もなくなりました。

 

局所性多汗症

手のひらや足の裏、わきの下というのは特に交感神経の影響を受けやすい部位です。

 

局所性多汗症の場合、緊張するとなおさら汗が増える、意識しだすと汗が止まらなくなるなどの症状を伴う方が多いです。
また逆に緊張した後で、ほっとすると汗があふれ出すというケースもあり、交感神経の働きも含めた自律神経のバランスの乱れに原因がある事が多いように思います。

 

そのため手掌多汗症などの局所性多汗症は、自律神経のバランスを整える漢方薬で過度の発汗が軽減していく事があります。

 

自律神経を整える作用があるとされる「柴胡」が構成薬味として使われている四逆散や柴胡清肝散、抑肝散などの漢方薬や、気の発散作用のある桂枝・甘草がふくまれる桂枝加竜骨牡蠣湯、苓桂朮甘湯などといった漢方薬を使用する事が多いです。

顔や頭部の発汗

更年期障害の症状の一つとして、顔や頭部からの発汗が増えることがあります。
また体温調節がうまくいかずに、急に身体が熱くなったり寒くなったりすることがあります。

 

そのため首から上の顔や頭部に多量の発汗がおきる場合は、柴胡桂枝乾姜湯や加味逍遥散、女神散といった更年期障害に対して使われる事の多い漢方薬で改善する事があります。

全身性多汗症

全身性多汗症でお悩みの方の中には、独特の皮膚の緩さ(皮膚を引き締める力の弱さ)を感じる事があります。

 

そのようなケースでは、皮膚や汗腺を引き締め体内の余分な水を尿として排出する作用のある「黄耆」という薬味が含まれる桂枝加黄耆湯や防己黄耆湯が使われる事が多いです。

 

また疲れ易さを伴ったり、疲労と多汗症が関係するようなケースでは、「黄耆」に加えて更に体力を補う薬味が加わった、補中益気湯や黄耆建中湯、十全大補湯が効果を発揮する事もあります。

寝汗(盗汗)

多汗症状のひとつとして、大量の寝汗をかくという事があります。

 

東洋医学では、寝汗が多い状態を盗汗(とうかん)と表現します。
寝汗の量が多いために、何度も目が覚めて服を着替えなければならない事もあります。

 

漢方では、身体に余分な熱がこもっていたり、体力が弱った状態が続いている事を原因と考えます。

 

やはり「黄耆」が使われている漢方薬を使用する事が多いです。

 

多汗症は、西洋医学的にもはっきりとした原因が解明されているわけではありません。

 

東洋医学で考えると、自律神経のバランスの乱れが原因のケースと体質的に皮膚や汗腺の働き、水の流れに問題があるケースがあるようです。
また自律神経と体質の両者が複合している事も多いです。

 

漢方薬を体質・症状に合わせる事が出来ると少しずつ発汗の量が減っていき、症状が気にならなくなってくる事も多いです。

 

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