便秘に漢方薬

便秘について

健康を維持する秘訣の一つとして「快食」「快眠」「快便」があげられます。
快食はお腹が空いて美味しくご飯を食べられる事、快眠は起床時に変な疲れが残らず気持ち良く動ける事、そして快便とはいつもスムーズに便が出て、おなかがすっきりしているということです。必ずしも毎日排便がある必要は無く、2~3日に1回ぐらいでも気持ち良く出てすっきりするなら便秘には当てはまらないと言われています。逆に毎日排便があっても、頑張って気張らないと出ない、排便後もすっきりせずに残便感が強いようだと健康的な排便状態とは言えません。

便秘の種類

全ての疾患、症状に共通する事ですが、表面的に表れている症状は同じようにみえても原因はそれぞれ異なる事が多いです。また一つの症状に対して一つの原因という単純なケースと、複数の要因が重なって起きているケースがあります。
便秘も気持ちよく便が出ないという症状は同じでも、便秘が起きる原因と改善に必要な漢方薬は個々人で様々です。

〇大腸内の乾燥

大腸内が乾燥している事で起きる便秘です。大便も乾燥してコロコロした便になる事が多いです。
高齢者になると身体の潤いが減り、皮膚も乾燥し易くなるように腸内も乾燥し易くなります。
そのため高齢者の便秘に多い傾向があります。
また東洋医学で熱証体質者と表現する、熱が体内にこもり易い方にもみられます。
熱が多い方の便は臭いも強くなる傾向があります。

 

漢方薬では麻子仁丸、滋陰降下湯、麦門冬湯など潤す作用のある漢方薬が適応になる事が多いです。食べ物では潤す作用のある海藻類(昆布やワカメ)や果物、生野菜、酸味のあるものが適しています。逆に乾燥させる作用、熱をこもらせる作用のある辛いもの、苦いものは控えめにする必要があります。

〇大腸の機能低下(弛緩性便秘)

大腸の働きが低下する事で、便としての排出がスムーズに出来なくなる便秘です。
便が直腸に到達するまでに時間がかかるため、腸内で水分が必要以上に吸収されてしまい便が硬くなります。硬いコロコロした便になる事が多いです。
高齢者や胃腸の弱い方、病後の体力が弱った方に起き易い便秘です。

 

東洋医学では気虚や脾虚(エネルギー不足の状態)と考えます。
漢方薬では身体を元気にする作用のある小建中湯、黄耆建中湯、補中益気湯などが適する事が多いです。

〇痙攣(けいれん)性便秘

ストレスや自律神経の乱れにより大腸が痙攣運動を起こし易くなり、その結果便の通過が停滞して起こる便秘です。弛緩性便秘に比べて腹痛や残便感が強いという特徴があり、ストレスや緊張の影響が大きいタイプの便秘です。旅行先で必ず便秘になるようなタイプにみられる事もあります。

 

気滞(気の巡りの停滞)を改善する作用のある四逆散、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、逍遥散などの漢方薬や、下腹の緊張を緩める作用のある桂枝加芍薬湯、小建中湯などが適する事が多いです。

〇直腸型便秘

大腸の出口にあたる「直腸」の異常が原因となって起こるタイプの便秘です。 便意を我慢する習慣がある人では、直腸に便がたまっても便意が生じない(排便反射異常)ために便秘になることがあります。 長年積み重ねた生活習慣による便秘のために、漢方薬で改善する際にも一番時間がかかる事の多いタイプです。

 

大甘丸、麻子仁丸、承気湯類といった大黄(下剤作用のある生薬)の含まれる漢方薬、もしくはその方の体質に合った漢方薬に大黄を併用しながら取り組む事が多いです。

 

このタイプの便秘は、大黄が含まれた漢方薬を毎日きちんと服用して、直腸に便が溜まれば排便したくなる習慣を取り戻す事が大切です。排便の習慣をつけながら下剤作用のある大黄の量を少しずつ減らしていき、最終的に大黄無しできちんと排便出来るようになるのが目標となります。

 

他にも細かく分類すると血流の悪さや身体の冷えなど様々な要因が便秘と関係してきます。

便秘の養生法

食事はとても大切です。白米と味噌汁をベースとした和食を中心にしましょう。
便を軟らかくする作用のある海藻類(昆布やワカメなど)を適度に食事に取り入れると良いと思います。白砂糖の多く含まれる甘いお菓子やジュース類の摂り過ぎは腸内環境を乱し、便通にも悪影響を与える可能性があります。

 

また小麦粉も便通に悪影響を与えると考えています。子供の便秘が増えている原因の一つに、毎朝パンを食べる家庭が増えている事も関係している可能性があります。菓子パンなら尚更良く無いと思います。パンやラーメン、うどんなどの小麦粉類は、嗜好品として時々食べる程度にとどめて、基本的には白ご飯とお味噌汁の食事にされると良いと考えています。

 

食生活や生活習慣を改めずに刺激性の下剤(大腸を無理やり動かすタイプの下剤)を続けていると、段々と量を増やさないと効果が出難くなる可能性があります。
漢方薬の生薬である大黄やセンナも刺激性の下剤に含まれます。

 

病院で処方される事の多い酸化マグネシウム、マグミットなどは便を軟らかくして排便をスムーズにさせる働きがあり、依存性の心配は殆ど無いとされています。
しかし腸内の乾燥タイプには効果が高いと思われますが、それ以外のタイプには効果が弱い可能性があります。

改善症例

〇70代・女性
石のように硬い便が少ししか出ないとのご相談。排便に時間がかかり、毎朝とても苦労しているようです。元々体力が無く、疲れ易くて胃腸も弱いとの事です。
胃腸の働きを強める作用のある小建中湯をお出しすると、石のような便が普通便になり、力まなくても出易くなったようです。この方の漢方薬代金 1日あたり450円(税別)

 

〇50代・女性
便が硬く、残便感がありお腹が張るとのご相談。便は細切れで少しずつしか出ないようです。
気の巡りを良くして、お腹の緊張を緩める事を目的に四逆散と半夏厚朴湯の2種類の漢方薬をお出ししました。服用を始めるとお腹の張りや残便感が気にならなくなり、すっきりと排便出来るようになり、体調全般も良くなったようです。 この方の漢方薬代金 1日あたり600円(税別)

 

〇80代・女性
大病をされて手術をしてから便秘になったとのご相談。下剤を服用するとかえって下痢になってしまうようです。病院からは便秘をするのは直腸の形に問題があると説明されたようですが、手術前までは便秘は無かったようですのでそれだけが問題とは思えません。
体力を回復して、身体を元気にする作用のある補中益気湯をお出ししました。漢方薬を服用して3週間頃から下剤無しで排便出来るようになり、身体の調子も良くなったようです。
この方の漢方薬代金 1日あたり400円(税別)

 

東洋医学では慢性的な便秘は様々な心身の不調に関わる事があると考えています。

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