膀胱痛症候群に漢方薬

膀胱痛症候群とは

膀胱痛症候群とは、膀胱に原因不明の慢性的な痛みや不快感、頻尿、残尿感などの症状が続く病態の総称です。
細菌感染が確認されれば細菌性膀胱炎、細菌感染は無いがハンナ病変という特徴的な潰瘍が膀胱粘膜に確認されればハンナ型間質性膀胱炎と診断されます。
上記に加えて結石や膀胱癌など原因と思われるものが確認されない場合に、膀胱痛症候群と診断される事が多いようです。

 

今までは原因不明の膀胱の痛みは間質性膀胱炎と診断される事が多かったようですが、数年間からハンナ病変があるものをハンナ型間質性膀胱炎、それ以外を膀胱痛症候群と呼ぶようになりました。

 

ハンナ型間質性膀胱炎は、膀胱粘膜にハンナ病変と呼ばれる特徴的な潰瘍があり、膀胱粘膜の炎症があきらかなため強い痛みが主な症状になります。
畜尿時や排尿時、時には排尿後の痛みが強く、畜尿で痛みが強くなるため、結果的に頻尿になる事が多いようです。

 

一方で膀胱痛症候群は、炎症が確認されないケースも含まれるため症状も多岐に渡る傾向があります。どちらかというと膀胱の痛みよりも、膀胱の不快感、頻尿、残尿感、尿意切迫感などが主な症状になる事が多いようです。

 

また症状が起きる部位も膀胱だけでなく、陰部や尿道口の不快感やヒリヒリ感を伴うケースが多々あります。痛み方もうずくまるような激しいものでは無く、鈍い痛み、重い感じ、ヒリヒリ感、チクチク感、張る感じなど様々です。

膀胱痛症候群と漢方薬

西洋医学的には原因不明でも、症状が起きるからには何かしらの原因があるはずです。
膀胱痛症候群の東洋医学的な原因は、下記のようなものが多いと考えています。

 

〇瘀血(おけつ)によるもの
瘀血とは古血の滞りの事を指します。古血以外でも身体にとって不要なもの、毒素となるものも含まれると考えて良いと思います。
瘀血は体幹下部に滞り易い傾向がありますので、膀胱や陰部、子宮などが影響を受け易くなります。瘀血があると血流の停滞や様々な身体の不調(痛みや湿疹、浮腫みなど)、情緒不安定の一因になる事があります。

 

瘀血は、長年の偏った食生活(甘いものや油物、脂物、添加物の摂り過ぎ)、慢性的な便秘、生理不順、大きな外傷などが原因となります。
慢性的なストレス、交感神経の過緊張も瘀血を形成し易くなります。
また生まれ持った体質というものがあり、ある程度日々の生活に気を使っていても、どうしても瘀血を生じ易いという方もいます。

 

〇血虚によるもの
血虚とは東洋医学の概念の一つで、血のエネルギー不足の事を指します。
血虚には貧血も含まれますが、貧血と診断されなくても血自体のエネルギーが低下していれば血虚と考えます。
血虚の状態であれば血流が低下したり、冷え易くなったりします。
また血の持つ潤す作用が低下するため、陰部や尿道などの粘膜が萎縮、乾燥傾向になり、刺激に過度に敏感になる可能性があります。

 

血虚も持って生まれた体質が影響する事もありますが、夜更かしや身体の冷やし過ぎ、食生活の偏り(栄養不足)、生理不順などが一因となります。

 

瘀血や血虚は、女性ホルモンのバランスの乱れとも大きく関わってきます。
この事は膀胱痛症候群には女性が圧倒的に多い事とも関係していると思います。
どちらか一方では無く、瘀血と血虚が混在しているケースも多くみられます。

 

〇慢性的な冷え
慢性的な身体の冷えは、痛みや不快感、頻尿などの一因になります。
頭寒足熱という言葉があるように、人間の身体は頭部は涼しく、足先は温かくが理想とされていますが、構造上的にどうしても下半身が冷え易くなってしまいます。
下半身の冷えと血流の悪化はお互い影響しますので、当然下半身の循環が悪くなります。
下半身を温める事を目的とした漢方薬で、膀胱症状が楽になるケースは良くみられます。

 

〇ストレス、自律神経の乱れの影響
膀胱は、もっとも自律神経の影響を受け易い臓器の一つといわれています。
緊張するとトイレに行きたくなる経験をした方は多いと思いますが、そのような状態が慢性的に起こっているともいえます。
また身体表現性疼痛という言葉があるように、ストレス、不安、抑うつなどの心理的要因は痛みや不快感の一因になる事があります。

 

気の巡りを良くする作用のある漢方薬や心身の緊張を緩める作用のある漢方薬、気持ちを落ち着ける作用のある漢方薬が有効な事が多いです。

 

〇細菌性膀胱炎や性感染症の名残
細菌性膀胱炎に罹り、抗生物質の服用で激しい症状が落ち着いた後も、頻尿や残尿感、軽度の痛み、違和感などが続く事があります。
また一時的に症状が落ち着いたようにみえても、疲れた時や体調を崩した時に何度も症状がぶり返す事もあります。
同様な事は膀胱炎だけでなく、クラミジアや淋病などの性感染症でも起こる事があります。

 

西洋医学的には細菌感染が消失すれば治癒したと考えますが、炎症の名残が修復されずにくすぶっている可能性があります。
抗炎症作用を含む漢方薬や組織の修復を促すもの、もしくは身体を元気にして免疫を高める作用のある漢方薬で改善出来る事が多いです。

 

上記以外にも様々な原因があるかもしれません。
膀胱症状が起きる原因を出来るだけ正確に把握して、適切な漢方薬を服用する事が大切です。
長年続く症状の場合は、原因は一つでは無く、様々な要因が重なっている事もあります。

膀胱痛症候群に対する漢方薬の一例

〇加味逍遙散
〇逍遥散
〇抑肝散
〇抑肝散加陳皮半夏
〇温経湯
〇当帰四逆加呉茱萸生姜湯
〇芎帰調血飲第一加減
〇四物湯
〇十全大補湯
〇連珠飲
〇芎帰膠艾湯
〇通導散
〇桂枝茯苓丸
〇柴胡疏肝湯
〇半夏厚朴湯
〇桂枝加竜骨牡蛎湯
〇柴胡加竜骨牡蛎湯
〇柴胡桂枝乾姜湯
〇柴胡桂枝湯
〇清心連子飲
〇六味丸
〇八味丸
〇五淋散
〇竜胆瀉肝湯
〇猪苓湯など

東洋医学的な症状、原因部分に適した漢方薬を服用する事が大切です。

 

膀胱症状の改善症例はこちらをご覧下さい。

泌尿器科疾患の症例

 

膀胱痛症候群は適切な漢方薬の服用で改善出来る事があります。

 

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