橋本病と甲状腺機能低下症とは

橋本病は、甲状腺ホルモンを作りだす甲状腺が自己抗体によって攻撃されてしまう自己免疫疾患です。正式には慢性甲状腺炎と呼ばれます。
なぜ自己抗体が出来てしまうのか残念ながら原因は分かっていません。

 

甲状腺は予備能力の大きな臓器なので、少しくらい破壊されても甲状腺ホルモンを作る能力が低下することはありません。
しかし、破壊が甲状腺全体に広がると機能低下症になります。

 

橋本病の方のうち何割かは、甲状腺ホルモンが低下する事で「甲状腺機能低下症」になります。
ただし甲状腺機能低下症は、橋本病以外でも他の原因で甲状腺のホルモンが低下する事で起こることもあります。

 

橋本病の発症にかかわる自己抗体は、TgAb(抗サイログロブリン抗体)とTPOAb(抗ペルオキシダーゼ抗体)です。
この2種類またはどちらか一方が確認できた場合には橋本病と考えられます。

 

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンであるFT4・FT3の低下と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の増加が起こります。

 

甲状腺機能が低下すると、全身の代謝が低下するためエネルギーの不足が起こり疲労感、息切れ、無気力などの様々な症状が出てしまいます。
皮膚の乾燥・脱毛・浮腫み・冷え・便秘・声がかすれる・体重の増加などの症状が甲状腺ホルモンの分泌量の低下で起こり易くなってしまいます。

 

また甲状腺ホルモンが低下するとその分泌を促進するために放出されるTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)が、甲状腺刺ホルモンの分泌を促すと同時にプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の分泌も促進してしまいます。
そのため高プロラクチン血症と同様に不妊の原因になってしまう事もあります。

橋本病(甲状腺機能低下症)と西洋医学での治療法

現在の西洋医学では、甲状腺を修復する治療法は残念ながらありません。
そのため不足している甲状腺ホルモンを補充する対症療法(ホルモン補充療法)がとられています。
チラーヂンなどの甲状腺ホルモン薬を一生飲み続ける必要があります。

橋本病(甲状腺機能低下症)と漢方薬

西洋医学では症状を抑える対症療法しか方法が無くても、漢方薬で根治が可能な病気がいくつかありますが橋本病・甲状腺機能低下症もそのうちの一つです。

 

漢方治療では、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの数値の改善、自己抗体であるTgAb(抗サイログロブリン抗体)、TPOAb(抗ペルオキシターゼ抗体)の正常化を目的として取り組んでいきます。

 

漢方薬で数値が正常化すると、再発防止に一定期間続けた後で漢方薬の服用も終了する事が出来ます。

 

橋本病も含まれる自己免疫疾患は、はっきりとした原因は分かっていませんが、身体のバランスが崩れた状態です。
そのため養生法では、規則正しい生活をする、きちんと休息をとる事が大切です。
また難しいかもしれませんが、出来るだけストレスを溜めない工夫をする事で改善が早くなります。

 

食べ物の注意点として、昆布やひじきに多く含まれる「ヨード」には甲状腺ホルモンの分泌や合成を抑制し甲状腺ホルモンを低下させる作用があるため摂取を減らす必要があります。