めまい・メニエール病と漢方薬

めまいは、医療機関を受診する患者さんのなかで、もっとも訴えが多い症状のひとつです。
一概にめまいといっても原因は様々です。長く通院しているにもかかわらず、原因がはっきりせず、なかなか改善しないというケースも少なくありません。

めまいは、漢方薬が得意とする症状(疾患)の一つです。

 

めまいが起きる東洋医学的な原因(寒熱・気・血・水の偏り)に対して、適切な漢方薬を服用することで、症状が改善することは多くあります。大切なのは体質的な傾向や症状に対して適切な漢方薬を服用することです。誰のめまいにでも効く万能の漢方薬というものはありません。

 

当店では糸練功(しれんこう 筋力反射テスト)という特殊な技術を用い、一人ひとりのお身体の状態に適した漢方薬をご提案できるように取り組んでいます。めまいでお困りの方はご相談ください。

漢方から見ためまいの原因

水滞(水分代謝異常)

めまいの中で最も多くみられるタイプです。体に溜まった余分な「水(すい)」が、めまいの原因になると考えられています。メニエール病の原因となっているケースも多く見られます。

 

代表的な漢方薬: 苓桂朮甘湯 / 五苓散 / 半夏白朮天麻湯 / 澤瀉湯 / 真武湯 など

瘀血(古血の停滞、血流の滞り)

体内に滞った古血によって、めまいが引き起こされると考えられています。
一般的には血流障害や循環障害と呼ばれる状態です。また女性ホルモンに作用する性質もあるため、女性ホルモンが関与するめまいにも用いられます。

 

代表的な漢方薬: 桂枝茯苓丸 / 桃核承気湯 / 折衝飲 / 生薬製剤2号方 など

血虚(血のエネルギー不足)

「血(けつ)」の持つエネルギーの不足から起きるめまいです。貧血傾向や、女性ホルモンの働きに関するエネルギー不足も含まれます。

 

代表的な漢方薬: 当帰芍薬散 / 四物湯 など

気虚(気のエネルギー不足)

「気(き)」のエネルギー不足もめまいの原因になると考えられています。疲れやすさや消化器系の弱さを伴うことが多いのが特徴です。

 

代表的な漢方薬: 補中益気湯 / 帰脾湯 など

気滞(気の巡りの停滞)

ストレスなどが原因となり、気の巡りが滞ることで起きるめまいです。自律神経のバランスの乱れが影響しているケースも多く、イライラや気持ちの落ち込み、うつ症状などの精神症状を伴うこともあります。

 

代表的な漢方薬: 半夏厚朴湯 / 四逆散 / 小柴胡湯 / 香蘇散 / 柴朴湯 など

気の上衝(気が上に突き上げる)

気が急激に頭部へ突き上げることによるめまいです。自律神経のバランスの乱れが影響していることも多く、不安感や気持ちの落ち込みなどを伴うこともあります。

 

代表的な漢方薬: 苓桂朮甘湯 / 苓桂甘棗湯 / 桂枝加竜骨牡蛎湯 など

その他(頚椎性めまい)

頚椎(首の骨)が原因のめまいも意外と多くみられます。頚椎に小さなゆがみや椎間板の狭窄があると、首や肩の筋肉が過緊張を起こし、脳内の血流低下や自律神経の乱れにつながります。

 

頚椎性のめまいは一般的な東洋医学の「気・血・水」の概念からは少し外れるため、漢方専門店でも見落とされがちな原因のひとつです。水滞や瘀血を改善する漢方薬を服用し続けてもなかなか良くならないケースでは、頚椎のゆがみが関係していることが多くあります。

 

代表的な漢方薬: 桂枝加苓朮附湯 / 葛根湯加苓朮附湯 / 麻杏薏甘湯 / 防己黄耆湯 / 越婢加朮湯 など

頚椎性めまいの症例

症例1:40代・女性
1年前から、ほぼ1日中頭がふわふわ、ぐらぐらするめまいが起きるようになりました。病院では「心因性めまい」との診断を受けています。
いくつかの漢方薬局で血虚や水滞を改善する漢方薬の服用を続けたところ、体調自体は少し良くなりましたが、めまいに関しては変化が無かったようです。

 

症状の出方や糸練功の反応から、気の巡りを改善して、自律神経のバランスを整える漢方薬をお出ししたところ、めまいは6割程度に減りました。しかしそこからなかなか改善が進みません。
そこで頚椎に対する漢方薬を追加したところ、順調に改善が進み始め、めまいが起きることはほとんど無くなりました。

 

症例2:30代・男性
めまいや頭痛、下痢、手のしびれ、不眠症状などのご相談で来店されました。
病院を受診したところ「自律神経失調症」の可能性があるといわれたようです。自律神経を整えることを目的とした漢方薬をお出ししたところ、すべての症状に順調な改善がみられました。

 

そろそろ漢方薬も終了できるかなという時期に、再びめまいが起きるようになりました。そこで自律神経を整える漢方薬に加えて、頚椎に対する漢方薬をお出ししたところ、めまいが起きることはなくなりました。

 

この方の場合は、自律神経を整える漢方薬と頚椎に対する漢方薬の2種類が必要だったようです。

めまいの種類と原因

回転性めまい

周囲がぐるぐると回転しているように感じるめまいのことです。回転性めまいの多くは、平衡感覚を司る三半規管の不具合によって起こります。内耳の前庭にある耳石が原因となる「良性発作性頭位めまい症」や、内耳を満たしている内リンパ液の過剰による「メニエール病」によって起きていることが多く見られます。

良性発作性頭位めまい症

「良性発作性頭位めまい症」は、内耳にある「耳石」が剥がれ落ちて三半規管に入り込み、頭部を動かす際に刺激となることが発生原因と考えられています。多くの場合は数週間から数ヶ月で自然と治ると言われていますが、一部で長期にわたって続く難治性のものもあります。

「良性発作性頭位めまい症」に対しては、水の偏在を調整する漢方薬で改善できることが多くあります。

良性発作性頭位めまい症の症例

症例:10代・男性

1年前から起床時にめまいや吐き気、頭痛が起きるようになり、「良性発作性頭位めまい症」と診断を受けました。病院で処方された薬を飲むと倦怠感や眠気が出てしまいます。

 

めまいや頭痛のために学校も休みがちになり、いつまでも症状が改善されないため、ご相談にご来店されました。

 

水の偏在を調整する2種類の漢方薬をお出ししたところ、1ヶ月後にはめまいが起きる頻度が減り、学校を休むことも少なくなってきました。3ヶ月後には、ほとんどめまいが起きることはなくなりました。

メニエール病

内耳の中の「内リンパ液」が過剰になり、むくみ(水腫)が生じることで激しいめまいが引き起こされます。耳鳴りや難聴、耳の閉塞感(耳が詰まった感じ)を伴うケースも多く見られます。

なぜ内リンパ液が過剰になるのか、詳しい原因は分かっていません。そのため根本的な治療法は確立されておらず、西洋医学では対症療法が中心となります。

メニエール病の症例

30代・女性

10年ほど前から定期的に起きるめまいに悩まされており、病院では「メニエール病」との診断を受けています。半年前から週に1回ほどのペースで回転性めまいが起きるようになってしまいました。

また回転性めまい以外にも、体がふわふわとする動揺性めまいも常に感じています。めまいのため、会社を休むことも増えてしまいました。

 

水の偏在を調整する漢方薬と、血流を改善する漢方薬の2種類をお出ししたところ、2週間後には回転性めまいが起きることはなくなりました。動揺性めまいはなかなか落ち着きませんでしたが、何度か漢方薬の組み合わせを見直して3ヶ月後には、ほとんど起きることはなくなりました。

その後も再発防止と体質改善のために1年近く服用を続けていただきましたが、回転性めまいも動揺性めまいもほぼ起きることはなく、落ち着いた状態を維持されています。

起立性めまい、立ちくらみ

急に立ち上がった時や、うつむいた時、振り向いた時に感じるめまいです。頭がくらっとしたり、目の前が真っ暗になったりすることもあります。

寝不足が続いている時や疲れている時に感じたことがある方も多いと思いますが、頻繁に起きる場合は適切な治療の対象となります。病院では「起立性調節障害」や「起立性低血圧」と診断されることもあります。

 

起立性めまい、立ちくらみの原因

自律神経のバランスの乱れ

人は起立すると、重力によって頭部の血流量が一時的に低下します。通常はそれを防ぐために自律神経が働き、即座に脳内血流が安定するよう調整されています。しかし自律神経が乱れ、このコントロール機能がうまく働かなくなると、立ちくらみや起立性のめまいが起こると考えられます。

このような場合は、自律神経を整えて脳血流を安定させる漢方薬を用いることが多く、漢方薬で非常に改善しやすい症状のひとつです。なお、自律神経の乱れにつながる夜更かしやスマートフォンの過度な使用を控えていただくと、より改善が早くなります。

血栓などによる脳血流の低下

脳内の血管に血栓ができたり、何らかの理由で脳血流が阻害されたりすると、立ちくらみの原因になることがあります。完全に脳血流が塞がれると脳梗塞につながります。

血栓が原因であることが明らかな場合は、病院での緊急な治療が必要です(脳梗塞の手前の危険な状態です)。一方、病院の検査で特に異常が見つからない場合は、駆瘀血剤(くおけつざい)と呼ばれる血流を改善する漢方薬を用います。

貧血、低血圧

もともと血圧が低かったり貧血傾向があったりする方は、立ちくらみを起こしやすくなります。東洋医学ではこれを「血虚(けっきょ)」の状態として捉え、「血」を補い血流を改善する漢方薬を用いることが多くあります。

起立性めまいの症例

症例1:60代・女性

数日前から頭を動かすとクラっとしためまいが起きるようになりました。あまりに頻繁に起きるので、外出するのも怖い状態です。 自律神経を整え、脳内血流を調節する漢方薬をお出ししたところ、2日後にはほとんど気にならなくなりました。その後も再発することはありませんでした。

 

症例2:50代・女性

1ヶ月ほど前から布団から起きる際に頭がふらっとするようになりました。病院で検査を受けましたが、特に異常は見つかりませんでした。 自律神経を整える漢方薬と、血虚を補う漢方薬の2種類をお出ししました。服用を始めて1ヶ月後には、毎日あったふらつきが週に3回ほどの頻度に減り、2ヶ月後には起床時にふらつくことはなくなりました。

 

症例3:10代・女性

2ヶ月ほど前から立ちくらみやめまい、倦怠感、息切れなどが起きるようになり、学校も休みがちになってしまいました。病院では「起立性調節障害」との診断を受けています。処方された薬を服用していますが、症状に改善がみられないためご相談にご来店されました。 脳血流を改善する漢方薬と血虚を補う漢方薬、補助剤をお出ししたところ、10日ほどで立ちくらみや倦怠感に軽減がみられ、毎日学校に通えるようになりました。その後も服用を続けていただき、5ヶ月後にはめまいや倦怠感などの症状が消失しました。

浮動性めまい(ふわふわとしためまい)

体がふわふわ浮いている感じでふらつく、常に揺れているように感じるめまいのことです。体が揺れているようで、まっすぐに歩けないこともあります。

浮動性めまいは、めまいの中でも特に様々な原因が考えられます。いくつかの病院を受診したものの原因が分からない、病院ごとに診断名が違うといったケースも少なくありません。

 

浮動性めまいの場合は、水滞(不要な水の停滞)が関係していることが多いです。またストレスなどが原因で自律神経が乱れて起こる「心因性めまい」のケースがあります。頚椎(首の骨)の異常(小さなゆがみや椎間板の狭窄など)によって周囲の筋肉が緊張し、脳血流の低下や自律神経の乱れから起きる「頚椎性めまい」も意外と多く見られます。

浮動性めまいの症例

症例1:30代・女性

病院では「メニエール病」との診断を受けています。 血流を改善する漢方薬と水の流れを改善する漢方薬の2種類を併用していただいたところ、3ヶ月後には浮動性めまいは気にならなくなり、「久しぶりにすっきり歩ける」と喜んでいただきました。

 

症例2:30代・男性

定期的に浮動性めまいが起きるため、ご相談にご来店されました。めまい以外にも頭痛が頻繁に起こり、また非常に物音がうるさく感じる聴覚過敏もあるようです。 自律神経を整える漢方薬をお出ししたところ、飲み始めのしばらくは何度かめまいが起こりましたが、その後は起きることはなくなりました。また、頭痛や聴覚過敏の症状も落ち着きました。

めまいに対する養生法

めまいが起きている原因によって養生法も異なります。

 

水滞(すいたい)タイプの養生法

水滞型のめまいというのは、体内で水の偏在が起きている状態です。あるべき場所には水が不足し、必要のない場所に過剰な水が溜まっています。

このような状態で水分をたくさん摂っても、不要な場所にますます水が溜まるだけで、症状の悪化を招くこともあります。適切な水分補給は必要ですが、無理にたくさん水分を摂ることは控えることが大切です。

また、水の偏在には内臓の冷えが関わっていることもあります。冷えが関係している場合は、冷たい飲料や体を冷やすコーヒー、スムージーなどは控えていただくと改善が順調に進みます。

自律神経・頚椎が原因の養生法

自律神経の乱れが原因のめまいでは、パソコンやスマートフォンの過度な使用など、脳を過剰に興奮させる行為を控える必要があります。特に寝る直前までの使用は睡眠の質を低下させるため、さらに良くありません。

また、頚椎性めまいの場合も、下を向いて長時間スマートフォンを見ていると首に大きな負担がかかってしまいます。長時間の使用は避け、無理のない姿勢で見ることが大切です。

 

めまいの原因は様々です。
そのためめまいの原因を体質的な傾向、症状の出方などから正しく捉えて、お身体の状態に合った漢方薬を服用する必要があります。めまいでお困りの方はご相談ください。

 

直接ご来店頂くのが望ましいですが、遠方にお住まいや事情で来店が難しい方にも対応しています。まずは電話(0598-30-6525)またはメールでご連絡下さい。