胃痛、腹痛と一口にいっても痛みの原因は様々です。
原因としては神経性胃炎や胃・十二指腸潰瘍などが多く、また胆砂・胆石が原因で脂の消化不良が起こり胃痛や胃もたれが起こる事もあります。
最近ではストレスが関係すると考えられる過敏性腸症候群による腹痛や下痢、便秘の症状でお悩みの方が増えていると言われています。
食べ過ぎや冷たいものの飲み過ぎなどで、一時的に痛みが出ることは誰にでもありますが、慢性的に不快な症状が続くようでしたら漢方治療をお勧めします。
胃痛・腹痛の漢方治療
漢方治療では、痛む部位や時間帯(空腹時に痛むか、食後に痛むか)、温めると楽なのか逆に不快なのかなどの症状から、漢方薬を選んでいきます。
過敏性腸症候群のようにストレス、自律神経の状態が深く関わる疾患の場合は、自律神経のバランスを整える漢方薬も並行して服用して頂く事で、改善効果を高める取り組みをしています。
またクローン病や潰瘍性大腸炎も漢方薬で改善・根治する事を多く経験しています。
胃痛・腹痛の症例
症例①
空腹になると胃が痛む症状に対し安中散という漢方薬をお出ししました。
今まで胃痛になった事は無かったが、職場環境が変わりストレスを感じるようになった頃から症状が出るようになったとの事で、軽度の神経性胃炎、胃酸過多の状態にあるように感じました。
安中散に含まれている牡蠣には制酸作用があり、延胡索、縮砂には止痛作用があります。
安中散は、痛みがある時に飲むと即座に痛みを改善する作用があり、継続的に飲む事で痛みが起きないようになります。しばらく服用を続ける事で胃痛の症状が出ることもなくなりました。
症例②
頻繁に腹鳴(お腹がゴロゴロ鳴る)が起こり、臭いの強いガスが出るようになり、胃痛、胸焼けが起こるようになってしまいました。
東洋医学的には、お腹に熱がこもっている状態で、大元には胆砂による胆汁の欝滞がありそうです。この方には半夏瀉心湯という漢方薬をお出しした所、段々と痛みを感じることが少なくなり、平行して腹鳴も起こらなくなりました。
症例①の安中散は、温める作用のある薬味が多く含まれているため、冷えがベースにある胃痛、腹痛に使う漢方薬です。症例②のように熱がこもっている胃腸症状に誤って用いると、改善するどころか症状が悪化してしまいます。漢方治療は、同じ胃痛でもその方の体質、病状から判断して正しい漢方薬を選ぶ必要があります。